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トピックス : 「 最 近 問 題 と な っ て い る 寄 生 虫 」


1、 レジオネラ症と自由生活性アメーバ類

レジオネラは土壌や水中に生息するアメ−バなどの原生動物に寄生する細胞内寄生性の菌である。これが呼吸器系に感染すると肺炎(レジオネラ症)や熱を伴った風邪の症状(ポンティアック熱)などを引き起こす。空調設備の冷却塔や加湿器、あるいは温泉などの風呂水が主な菌の繁殖の場となっている。その理由は適温の水がアメ−バ類の格好の生息場所となり、そのアメ−バ類を宿主としてレジオネラが増殖するためである。感染経路としては経気道感染で、汚染された冷却塔で発生したエアロゾル(ヒトが吸い込めるほど小さな水滴)が外気とともに室内に運ばれてこれを吸入すること、加湿器により発生したエアロゾルを吸うこと、あるいは汚染された温泉や風呂あるいは温水プール等の水を誤って肺に吸い込んだりすることで発症する。特に空調施設によりビル全体が汚染されている場合(シックビル)があり、公衆衛生上重要な問題となっている。また、特に院内感染の原因とならないように充分注意が必要である。
現在、冷却塔などの施設ではレジオネラの汚染を防止すべく対策が取られているが、専ら抗レジオネラ剤が使用されている。しかしながら、根本的な汚染対策としてはレジオネラ菌のみならず、その宿主となるアメ−バなどの生物を監視、コントロ−ルすることが是非とも必要である。例えば、アメ−バの内にいるレジオネラには薬剤が到達しないことが充分考えられよう。冷却塔などを薬剤処理しても繰り返しレジオネラが繁殖するのはこのようなことが原因と考えられている。

2、 クリプトスポリジウム症

本症は激しい水様下痢を主徴とした原虫性疾患で、1980年代になってから問題となった新しい寄生虫症である。本症は Cryptosporidium parvum(クリプトスポリジウム パルバム)と呼ばれる原虫の感染によって起される。下痢のほかに吐き気、むかつき、食欲減退等々の諸症状を呈する。健常者では時として不顕性感染に終わる場合もあるが、免疫力の低下した患者にとっては死の転帰をとることも少なくない。厚生省は「エイズ患者等免疫不全の状態にある方のクリプトスポリジウム感染予防について」と題してインターネット(厚生行政掲示板)で注意を促している。

わが国での最初の集団発生は1994年8月から9月にかけて神奈川県平塚市の雑居ビルで起きており、461名の患者が出た。また、本年(平成8年)6月初旬に埼玉県越生町において住民の約7割(8705名)が罹患する集団発生が起きた。世界各地から集団発生の報告も多く、中でも1993年4月に米国のミルウォキー州で起きた例では推定40万人を超える患者が出て、免疫不全者も罹患したため1995年までに100人以上の死者が出る事態となった。
この事態を重く見た厚生省は「クリプトスポリジウム緊急対策検討会」を設置し、当面講ずべき予防的措置や応急措置について『水道におけるクリプトスポリジウム暫定対策指針』を作成した。暫定対策指針では水道事業者、水道用水供給事業者および専用水道の施設者ならびに都道府県が当面講ずべき予防的措置や応急措置などが述べられている。今後は感染症対策の立場からの対応が求められ、速やかに本症の発生を検知して水道行政へ反映させることのできる有機的なシステムの整備が急がれよう。同時に、多方面にわたる本格的な調査・研究を実施して汚染状況を把握すること、そしてそれをもとにした抜本的な予防対策を講じて行かなければならない。
なお、水道水におけるクリプトスポリジウム検査法に関しての注意事項は「クリプトスポリジウムのオーシストと紛らわしい植物プランクトンの観察例」を参照してほしい

3、サイクロスポラ症

米国、カナダ等で最近話題となった原虫性疾患で、激しい水様下痢が主症状となる。この他に食欲不振、体重減少、鼓腸、吐き気、腹痛、疲れ、筋肉痛等の諸症状が現れるとされている。全く症状を呈さない患者もいるが、免疫不全患者にとっては重大な結果を招く恐れがあることが指摘されている。本症は Cyclospora cayetanensis と呼ばれる原虫の感染によって起される。感染経路は成熟オーシストによって汚染された水や食物を経口的に摂取することによる。オーシストが感染性を得るまで(成熟オーシスト)には外界で1〜2週間の日を要することから、人から人への直接的な感染は起きない。
米国では一部の農作物の汚染が疑われて話題となったが、真相は解明されていない。6月28日の米国CNNニュースによれば 各州保健衛生部はこれまでにテキサスで78例、フロリダで71例、ニュ−ヨ−クで43例、ニュ−ジャ−ジ−で32例マサチュ−セツとオハイオでそれぞれ28例、サウスカロライナで10例そしてペンシルベニアとイリノイでそれぞれ8例の症例を確認している。
わが国では本年3月に東南アジアを旅行した観光客が持ち帰った1例だけが知られているにすぎない。

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